プリセタ公式ブログ

血まなこの老人

数年前にインドに行った時の事だ。
僕がインドで感じた面白みのひとつとして
「値切り交渉」
がある。
「日本人=金持ち=カモ」
の図式がインドでは当たり前であり、
ホテルやタクシーは通常より値段を高く設定してある。
要は、「ふっかけてくる」わけである。
だから値段を聞いては、
わざと呆れ顔を作って「No、No」と言って帰る素振りを見せたりする。
そうすると、相手のインド人は慌てて10ルピー下げて再び交渉が始まるのである。
そんな日本人VSインド人の駆け引きが好きで、楽しみの一つであった。

インドの移動手段として、「サイクルリクシャー」という、
自転車に荷台のついた、簡易タクシーのような乗り物がある。
人力車の自転車バージョンだと思うと分かりやすい。
たった数十円で10分やそこらの距離を連れていってくれるのである。

説明が長くなってしまったが
インドでの旅にだいぶ慣れた頃、僕は一人の老人に出会ったのである。

年齢は60前後、父親と同じぐらいで、体は痩せこけており
ぼくはとある駅まで行くため、その老人が漕ぐサイクルリクシャーを止めたのである。
いつも通り値段交渉が始まる。
確か40ルピー(約100円)を老人は提示し、
僕はいつものごとく「No」顔を示す。
悲痛な顔の老人。
しかし断固譲らず、値切りを訴える。
苦しそうに「30ルピー」と口に出す老人。
しかし僕はさらに値切り姿勢を崩さなかった。
最終的に、「勘弁してくれ!」と
それは本当に苦渋の表情で老人「25ルピー」と言った。
僕はちょっと変な気分で頷いた。
老人の目は本当に苦しそうだった。

そして僕を荷台に乗せ、老人は自転車を漕ぎ始めた。

暑い…。

その日は30℃をゆうに越す炎天下だった。

老人の汚いTシャツは汗でびっしょりだった。

インドでは、サイクルリクシャーは立場が弱いらしく、
道路を走る老人は、車やタクシーから
「邪魔なんだよ!」
と罵声を浴びせられていた。

10分が経っても、まだ目的の駅につく気配はない。

どうやら駅まで結構遠いらしい。

老人は全身汗まみれ

両足のふくらはぎは震えているようにも見える。

時折、老人の荒い息が聞こえてくる。

しかし駅はまだ見えてこない…。

おいおい、これは60円の仕事じゃないだろ…。

老人は、ただただ自転車を漕いでいた。

僕は駅までの道のりの間ずっと、痩せこけた老人の背中を見つめていた。

なぜ僕はたった40円を必死に値切ったのだろう。
そんなことを考えながら。

結局25分かかって、サイクルリクシャーは駅に到着した。
疲れきった老人の皺だらけの手に、
僕は倍の50ルピーを手渡し、
逃げるようにその場を去ったのであった。

前置きが長くなってしまったが、
今日ペンギンプルペイルパイルズの「謝罪の罪」を見ながら、
僕はそんなことを思い出していた。
「謝罪の罪」は、本当に面白かった。

あの老人に倍の50ルピーを手渡したのは、
老人のため、というより
自分の為ではなかったか。

「謝罪の罪」はそんな色んなことを考えさせられた素晴らしい作品でした。

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