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坂の途中。

関です。
関寛之です。
運んでます。
重たそうに運んでます。
渋谷に行く為に長く急な坂道を自転車で漕いでいると
段ボールを3箱運んでいる女の人がいました。
重たそうだなぁ。
なんて後ろから見て思っていると
突然女の人は膝から崩れて段ボールを落としてしまい
中から大量のみかんが坂から転がりました。
漫画みたいな展開ですが
慌てて自転車を降りて一緒にみかんを拾う僕。
「ありがとうございます!」
満面の笑みで感謝された事もありますが
その女の人よく見るとすごくかわいいです。
「いえいえ。」
と言って自転車に乗ろうとすると
女の子はまた3箱の段ボールを運ぼうとするので
「あの、運びましょうか?」
「え?」
「段ボール。」
「えっいや悪いからいいですよ。」
「いやいや、かなり重いじゃないですか。
 運びますよ。坂の上まででよかったら。」
「・・・すいません。ありがとうございます。」
そんな訳で自転車を降りて一緒に段ボールを運ぶ僕。
「本当にすいません。お急ぎじゃないんですか?」
「いえいえ。まあ用事はありますけどそんなに急いでないんで。
 どこまで行くんですか?」
「渋谷です。」
「え?渋谷?」
「はい。」
「けっこうありますよ。バスとか使った方が良いんじゃないですか?」
「そうなんですけど仕事なんで。」
「仕事?みかんを歩いて運ぶ仕事ですか?」
「いや私業者なんですよ。」
「え?大学生じゃないんですか?」
「はい。果物を売って歩く業者なんですよ私。
 渋谷へ歩くまでにお店や家に飛び込みで
 お邪魔して果物を売ってるんです。」
「えー飛び込みって大変じゃないですか?」
「そうですね。まあ大体8割は断わられますね。
 たまに怒鳴られる事もありますよ。」
「うわーきついなぁ。」
「でも常連さんというか毎週買ってくれる家もあって
 運がいいと渋谷に着くまでに手ぶらなんて事もあるんですよ。」
「へぇ。」
「あの・・良かったら買いませんか?」
「え?」
「フルーツ。」
「フルーツ?」
(いきなり果物をフルーツって言い出したこの人)
「はい。さっき拾ってもらったみかん。
 あれみかんじゃなくてデコポンって言うんですよ。」
「デコポン?」
「はい。しかも愛媛のデコポンなんで自慢の美味しさなんです。」
「へー愛媛の人なんですか?」
「いや私は茨城なんですけど。」
「え?水戸?」
「いや神立です。」
「神立?」
「我孫子とか牛久方面の土浦の1つ先なんですけど。知ってます?」
「いやぁ行った事ないですねぇ。」
「じゃあどうですか?」
「え?」
「フルーツ。」
「・・・・・。」
「私を助けると思って。」
「んー」
「ね?」
「ねって言われても。」
「えーお願いしますよ。これも何かの縁じゃないですか?」
「縁?」
「これも何かの縁なんで安くしますから。」
「んー安くねぇ。いくら?」
「1箱5千円です。」
「いやいやいやいや。1箱もいらないですよ。」
「えーみんな1箱から買っていきますよ。じゃあ破格の20コでいいです。」
「いやいや。20コも食べられないですよ。」
「じゃあ格安の10コ。10コならいいですよね?」
「・・んー・・・いくら?」
「千円。」
「千円ねぇ。」
「激安でしょ。おまけで2コつけちゃう。ね?」
「・・・・・・。」


そんな訳でデコポン買ってしまいました。
数日後。
また渋谷に用事があり
自転車で坂を登っていると
坂の途中の家から
段ボールを持った女の子が出て来て
僕と目が合いました。
しかし何事もなかったかの様に
女の子は普通に渋谷に向かって行きました。
デコポン。
なんか間抜けな響きですね?
僕みたい。

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