父との約束
「富士山登ろか?」
と僕は父に言い、父は
「うん、登ろか」
と言った。
つい先日の事だ。
そんなあっさりしたやり取りから、
今年7月、父と二人で富士山に登ることが決まった。
拍子抜けするほどあっさりとしたやり取りだった。
父はもうすぐ還暦を迎える。
いつの間にか老眼をかけ、
足はふらつき、白髪も増えた。
ほとんど実家に帰らないため、
久々に帰る度に、
父は少しずつ順調に年老いていた。
だからこそ、還暦を迎える前に
父と富士山に登ろうと思った。
実家に帰ってもさほど話すわけでもなく、
年齢を重ねるにつれ、
次第に本音は遠のいていったように思う。
父と出かけるのなんていつ以来だろうか。
そんなレベルの僕らが、
富士山までの道のり、
山頂へと続く道のり、
そして山頂に到達したその場所で
一体何を語るのだろうか。
そんな感じの、気まずさが充満しそうなこの状況を想像し、
しかし僕は不安を覆うように、
ワクワクとした昂揚感を抑えられずにいる。
山頂の寒い中、父と二人、
ブルブル震えながら朝日を待つ姿を想像し、
それはひどく滑稽に思えるのである。

2010/3/20 土曜日 @ 23:48:38
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