自転車に乗って
何やってんだバカヤロー!
チンタラやってんじゃねえよ、中山バカヤロー!
ふざけんな中山コノヤロー!
後ろに座っていたオヤジから聞こえる中山バッシング。
競輪場に野次が飛ぶ。
そう、僕は生まれて初めて競輪場に来ていたのだった。
秋の公演の準備に追われ、アルバイトに追われ、生活に追われ、気が付くと僕は、自分の時間を全く持っていなかったことに気付く。
どこかに行きたい衝動に駆られ、ドライブも兼ねて友達と競輪場にきていたのだった。
ガラすきの客席、妙に派手派手しいファンファーレ、オヤジたちの野次とタメ息、
そんな寂しい「場末」を感じさせる競輪場に、僕は一瞬にして虜になった。
たった5周の自転車レース。
屈強な男たちが徐々にペースを上げる。
客席が息を飲んで見守る中、ラスト一周半を告げる鐘が鳴り響く。
一斉にスパートをかける選手たち。
野次が激しくなる。
気が付くと僕も必死に叫んでいた。
興奮していた。
結局9戦賭けて3勝6敗、2千円の赤字を出したが、それ以上に何かを得たような気がした。
そういえば小津安二郎の「お茶漬けの味」の競輪場のシーンを見て行こうと思ったんだった、と車で高速道路を走りながらふと思った。





最近のコメント